壁紙の張り替えを専門とするベテランの職人さんに、美しく仕上げるための秘訣を伺いました。職人さんがまず強調したのは、施工前の養生の丁寧さです。どんなに綺麗に壁紙を貼っても、床や家具に傷をつけたり、糊が付着したりしてはプロの仕事とは言えません。部屋を保護するためのシートを敷き、巾木やドア枠の縁をマスキングテープで守る準備段階に、一流の職人は決して手を抜きません。そして、実際の作業において最も差が出るのが、カッターの刃の使い方だそうです。壁紙をカットする際、刃の切れ味が悪いと断面が毛羽立ち、そこから将来的に剥がれが生じやすくなります。プロは一箇所のカットが終わるたびに刃を折り、常に最高の切れ味を維持しながら作業を進めます。特に天井やコーナー部分の処理は、指先の感覚だけでミリ単位の調整を行うため、長年の経験が物を言います。また、糊の塗布についても、自動のり付け機の設定を素材に合わせて秒単位で調整します。素材の種類によっては、糊を塗ってから壁に貼るまでの「オープンタイム」をどれくらい置くかが極めて重要で、早すぎれば壁紙が伸びてしまい、遅すぎれば乾いて接着力が落ちてしまいます。この見極めこそが、職人技の核心部分です。最近増えている輸入壁紙などは、国産のものとは規格も素材も異なるため、さらに繊細な扱いが求められます。「私たちが貼った後は、そこに継ぎ目があったことさえ忘れてしまうような、そんな仕上がりを目指しています」と語る職人さんの言葉には、プロとしての矜持が感じられました。張り替え工事を依頼する際は、単に費用の安さだけでなく、こうした細部にまでこだわって作業をしてくれるかどうか、過去の施工事例や口コミを確認することが大切です。丁寧に張り替えられた壁は、光を優しく受け止め、部屋全体に凛とした空気感をもたらしてくれます。職人の手仕事によって完成した壁面は、機械的な工業製品にはない、どこか温かみのある美しさを放つのです。