現場一筋四十年、数えきれないほどの家を修理し、再生させてきたベテラン大工の目から見ると、最近のリフォームブームには少し危うさを感じることもあると言います。派手なチラシや格安のパック料金に目を奪われ、肝心の「家の骨組み」がおざなりにされているケースを多く目にするからです。大工の言葉を借りれば、家を直すということは、その家の痛みを診断し、適切な処置を施す外科手術のようなものです。表面の壁紙だけを新しくしても、中の柱が腐っていては意味がありません。彼がリホームの現場で最も大切にするのは、まず床下の状態と屋根裏の乾燥具合を確かめることです。シロアリの被害がないか、雨漏りの形跡はないか、湿気がこもっていないか。これらを解決せずに新しい設備を導入するのは、砂の上に城を建てるようなものだと諭します。また、リホームにおいて「100パーセントの正解」はないとも言います。住む人の年齢、家族構成、そして予算にはそれぞれの事情があります。大切なのは、限られた条件の中でいかに最善を尽くすかです。高価な素材を使わなくても、木の性質を見極めて適材適所に配置したり、風の流れを考えて窓の位置をわずかに調整したりするだけで、住み心地は劇的に変わります。熟練の技術を持つ職人は、建物の声を聴くことができるのです。また、彼は最近のリホーム事情において、施主が積極的に工事に関わることの重要性も説いています。任せきりにするのではなく、工事の進捗を自分の目で確かめ、疑問があれば遠慮なく質問すること。そうした対話の中から、図面には現れない細かな使い勝手の向上が生まれると言います。例えば、収納棚の高さを一センチ単位で調整したり、コンセントの位置を実際の家事動線に合わせて変更したりといった細かな気配りは、現場でのコミュニケーションからしか生まれません。家は職人が作るものですが、住むのはお客様です。その橋渡しを丁寧に行うことこそが、プロとしての矜持だと言います。
ベテラン大工が語るリホームの現場で本当に大切な家づくりの基本