私が手に入れたのは、都心の入り組んだ路地の奥にひっそりと佇む、築五十年を超えた小さな木造平屋でした。周囲を住宅に囲まれ、道幅が二メートルに満たないため、一度壊せば二度と建てられない再建築不可物件でしたが、その分価格は驚くほど安く、何より静寂に包まれたその場所の雰囲気に一目惚れしてしまいました。銀行の住宅ローン審査は難航し、最終的にはリフォーム一体型の特殊なローンを利用することになりましたが、そこから始まった再生への道のりは、今振り返れば非常にエキサイティングな体験でした。工事が始まり、壁を剥がしてみると、案の定、土台の腐食やシロアリによる被害が各所に見つかり、一時は計画の中止も頭をよぎりました。しかし、古民家再生を得意とする大工さんたちが、一本ずつ丁寧に柱を補強し、ジャッキアップして建物の歪みを直していく姿を見て、家がゆっくりと息を吹き返していく確かな手応えを感じました。再建築不可リフォームでは建物の増築や大幅な形状変更ができないため、限られた空間をいかに広く、明るく見せるかが最大の課題でした。私は暗かった天井をすべて取り払い、立派な丸太梁をあえて露出させて天井高を確保しました。天窓を設けることで、一日中柔らかな光が差し込むリビングが完成したときは、言葉にできないほどの感動を覚えました。キッチンや浴室などの水回りには、自分のこだわりを詰め込んだ最新の設備を導入し、壁には調湿効果のある漆喰を自らも参加して塗りました。路地が狭いために大型の重機やトラックが入ることができず、資材の運搬はすべて職人さんたちの手運びとなりました。その手間賃もあり、リフォーム費用は当初の想定より膨らみましたが、完成した家は、画一的な新築住宅には絶対に出せない独特の深みと誇りを感じさせてくれる場所になりました。近所の方々からも、古かった家が綺麗になって街が明るくなったと喜ばれ、この土地の記憶を継承しながら住み続けられることに大きな幸せを感じています。制約の多い古い家を前にして躊躇している方がいるなら、私は自信を持ってリフォームという選択肢を勧めたいと思います。そこには、新築では決して手に入らない、贅沢で豊かな時間が流れているからです。
路地裏に眠る再建築不可物件をリフォームして理想の隠れ家を造った体験記